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【フレイルコラム】2020年から始まったフレイル健診。目的や内容を解説します!

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2020年4月から、75歳以上の後期高齢者の方向けの健診では「フレイル」について問う内容が含められることになりました。
なぜフレイルについて調べるのか、そもそもフレイルとは何なのか、フレイルを調べることでどのようなメリットがあるのかについて解説します。

 

フレイルを調べることで認知症予防につなげる

 

認知症にはいくつか種類がありますが、アルツハイマー型認知症などのほとんどの認知症は治療が確立されておらず、しかも、一度発症すると長期にわたって、場合によっては一生治療や介護が必要になります。
しかし、認知症や要介護状態は、予防することができないわけではありません。
認知機能や身体機能の衰えは徐々に進行するので、衰えた時点で気付き、適切な治療やトレーニングを実施すれば、健常な状態に戻ったり認知症の発症を遅らせたりできることもあるのです。

フレイルとは加齢によって身体的や精神的、社会的に弱った状態のことで、認知症や要介護状態の前段階とされています。
つまり、フレイルに陥ったときに気付くことができれば、認知症の回避を期待することができるのです。

 

2020年4月から始まった”フレイル健診”

 

フレイルは病気ではないため、血液検査や尿検査などでは調べることはできません。

2020年に厚生労働省では、今まで75歳以上の方を対象とした健診で活用されてきた問診票を、フレイルをふまえた後期高齢者の健康状態を把握する問診票に変更しました。
これがいわゆるフレイル健診と呼ばれる問診票です。では、どんな質問があるかみていきましょう!

フレイルを調べる15の質問

フレイル健診は、主に75歳以上の後期高齢者を対象に実施されます。
あまりにも質問が多いと被験者の負担になるため、「はい」や「いいえ」で簡単に答えられる15の質問からなる問診票を活用します。
問診票では、心身の健康状態と食習慣、口腔機能、体重の変化、運動・転倒、認知機能、喫煙習慣、社会参加、ソーシャルサポートにおいてどのような状態なのかを調べ、被験者の状態を細かく把握します。

質問 回答の選択肢
1.あなたの現在の健康状態はいかがですか ①よい
②まあよい
③ふつう
④あまりよくない
⑤よくない
2.毎日の生活に満足していますか ①満足
②やや満足
③やや不満
④不満
3.1日3食きちんと食べていますか ①はい
②いいえ
4.半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか ①はい
②いいえ
5.お茶や汁物等でむせることがありますか ①はい
②いいえ
6.6カ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか ①はい
②いいえ
7.以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか ①はい
②いいえ
8.この1年間に転んだことがありますか ①はい
②いいえ
9.ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか ①はい
②いいえ
10.周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか ①はい
②いいえ
11.今日が何月何日かわからない時がありますか ①はい
②いいえ
12.あなたはたばこを吸いますか ①吸っている
②吸っていない
③やめた
13.週に1回以上は外出していますか ①はい
②いいえ
14.ふだんから家族や友人と付き合いがありますか ①はい
②いいえ
15.体調が悪いときに、身近に相談できる人がいますか ①はい
②いいえ

フレイルを調べるタイミングと場所

フレイル健診は、通常の健康診断の際に実施されることが想定されています。
後期高齢者の97.9%は医療機関を受診しているので、フレイル健診も医療機関で行うことでより多くの方を調べることができると考えられます。

しかし、身体的・精神的・社会的な衰えは、一度調べれば良いというものではありません。
医療機関以外でも問診の機会を設け、全ての高齢者が数カ月~一年に一度はチェックできるようなシステムが作られています。

フレイルチェックを実施する場所・タイミング
●自治体で実施している健康診断の際にフレイルの問診も行う
●地域サロン等の高齢者が通う場所でフレイルの問診を行う
●かかりつけ医に受診する際にフレイルの問診を行う

 

 

フレイルを調べた後の介入

 

フレイルの有無を調べるだけでは、認知症予防や要介護予防につなげることはできません。
フレイル健診で認知症や要介護状態のリスクが高いと判断された場合には医療的あるいは社会的に介入し、健常な状態に戻していく必要があります。

また、健診の時点でフレイル状態ではなくても、老化や環境の変化により近い将来にフレイルになる可能性があります。
そのため、フレイルではない場合でも、ある程度の介入が必要になるでしょう。

結果に応じたアドバイスを実施

フレイル健診を実施した後に、結果に応じたアドバイスを受けます。
一般的な健診では「タバコを吸っている」などの望ましくない状況に目が向きがちですが、フレイル健診ではできるだけ好ましい状況に目を向け、高齢者が健康を維持していきたいと思えるような前向きなアドバイスを実施するようにしています。

また、答えの背景にも注目する必要があります。食事の頻度や運動習慣について尋ねる質問に対して「いいえ」と答えた方には、食事や運動が定期的にできていない原因に「抑うつ状態」や「閉じこもり」が隠れている可能性が考えられるでしょう。
問診とは異なるアプローチの質問を重ねることで、原因を探っていきます。

反対に、ほとんどの項目に対して良好な状態を保っている方には、現状を褒め、良い状態を保てている理由を自己分析してもらい、問診では尋ねられなかったことで何か問題に感じていることはないのか探っていきます。
いずれの場合も高齢者自身に自分の生活を振り返ってもらい、良い習慣を身につけ、続けていくように促すことが大切です。

他の機関との連携と継続的な支援

フレイル健診で高齢者の身体的・精神的・社会的な脆弱性を調べ、解決が必要な課題が見つかったときは、他の機関とも連携して継続的な支援を実施していきます。

例えば国民健康保険に加入し、特定健診を受診した高齢者に関しては、特定健診と特定保健指導が連携しているため、スムーズな支援を受けられるようになっています。
一方、特定健診以外のルートでフレイル健診を受診した場合は、高齢者のかかりつけの医療機関が保管している情報を活用して、指導や支援につなげていきます。

医療機関を受診していない高齢者や、定期的に健康診断を受けていない高齢者に関しては、保健所などの公的サービスからの個人的なアプローチが必要になることもあるでしょう。
場合によっては、民生委員や地域包括支援センターとも連携し、すべての高齢者が適切な支援を受けられるように取り計らいます。

 

年に一度は健康診断を受けよう

 

新しく始まったフレイル健診制度ですが、健診を受けるために高齢者の方が何か特別なアクションを起こす必要はありません。
国民健康保険に加入している方は年に一度の特定健診を受診する際に、自動的にフレイル健診も実施されます。
その他の保険に加入している場合でも、年に一度の健康診断を受診していれば、フレイル健診も同時に実施してもらえます。

フレイル健診は医療機関や地域サロン、保健所などで受けることができますが、これらの場所に行く習慣がない方は受診の機会も得にくくなります。
健康を維持するためにも、また、認知症や要介護状態を予防するためにも、少なくとも年に一度は健康診断を受け、地域で実施している体操教室やコミュニケーションサロンなどに参加するようにしましょう。

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